
アノテーションツールの選び方|無料で足りる範囲と限界
アノテーションを始めようとして、まず「どのツールを使うか」を調べる方は多いと思います。無料のものも数多くあり、選択肢には困りません。
ただ、実際に手を動かした人が最初につまずくのは、ツールの機能ではありません。この記事では、ツールの種類と選び方に加えて、ツールを導入しても解決しない問題まで整理します。
目次
結論:ツール選びより先に決めることがある
どのツールを使うかより先に、「どの形式でラベルを付けるか」を決める必要があります。ここが決まらないと、ツールを選ぶ基準自体が定まりません。
矩形で囲むのか、輪郭に沿って塗り分けるのか、点を打つのか。形式によって、必要な機能も、かかる時間も、単価も大きく変わります。形式の選び方は画像アノテーションの種類と使い分けで整理しています。
画像アノテーションの種類と使い分け|物体検出・骨格推定・領域分割画像アノテーションには物体検出・領域分割・骨格推定・分類の4種類があります。それぞれの向き不向き、どれを選ぶかの判断順序、単価が変わる仕組みまで。1ラベル6円〜の実費で、小さく試す進め方も解説します。annotation-support.com
形式が決まってはじめて、「その形式を効率よく作れるツールはどれか」という問いが成立します。順番を逆にすると、ツールに合わせて形式を決めることになり、本来必要のない精度で作り込んでしまいます。
そもそもアノテーションとは何をする作業なのか、という基本から確認したい場合はアノテーションとは|意味・種類・作業の進め方をご覧ください。
アノテーションツールの3タイプ
数は多いものの、性質で分けると3つです。
ローカル型(インストール型)
自分のPCにインストールして使う形式です。導入が最も簡単で、データを外に出さずに済むのが利点です。矩形やポリゴンといった基本的な作業に向いています。
一方で、複数人で同じデータを扱う仕組みがありません。誰がどこまで終わったかを別途管理する必要があり、人数が増えると破綻します。個人か少人数の検証段階向けです。
セルフホスト型(自社サーバーに構築)
オープンソースのツールを自社サーバーに立てて使う形式です。複数人での分担、進捗管理、レビュー機能まで備えたものが多く、量産に耐えます。ライセンス費用もかかりません。
ただし構築と運用に技術者の時間がかかります。サーバーの用意、アップデート対応、トラブル時の切り分け。「無料」ではありますが、無償ではありません。
クラウド型(SaaS)
ブラウザだけで使え、構築が不要な形式です。多くは自動ラベリング支援や品質管理機能を備えています。すぐ始められるのが最大の利点です。
費用は従量課金か月額で、データを外部サービスに預けることになります。機密性の高いデータを扱う場合は、利用規約と保管場所の確認が必要です。
なお、外注する場合はツールの用意自体が不要になります。対応している形式は画像・動画アノテーションのページにまとめています。
無料ツールで足りるのはどこまでか
無料ツールは十分に実用的です。ただし、足りる範囲には境目があります。
| 条件 | 無料ツールで足りる | 厳しくなる |
|---|---|---|
| 作業人数 | 1〜2人 | 3人以上 |
| 件数 | 数百件まで | 数千件以上 |
| 形式 | 矩形・分類 | セグメンテーション・動画 |
| 期間 | 単発 | 継続的に追加 |
境目になるのは「人数」と「継続性」です。1人で数百件を1回作るだけなら、無料ツールで問題ありません。
しかし3人以上で分担し、毎月データが追加される状況になると、ツールの機能ではなく運用そのものが負担になります。誰が何をどこまでやったか、基準は揃っているか、修正はどう回すか——ここが本題になります。
ツールを入れても解決しない3つのこと
1. ラベル設計
「対象が半分隠れているときは付けるのか」「画面の端で切れているものはどうするか」「小さすぎるものは無視するか」。これはツールが決めてくれません。
そして最も手戻りが大きい部分でもあります。作業を進めてから基準を変えると、それまでの分をすべて見直すことになります。
2. 品質のばらつき
同じルールを渡しても、作業者によって判断は分かれます。どの程度のズレを許容するか、誰が確認するかを決めておかないと、ばらつきに気づかないまま学習に使うことになります。
アノサポではサンプリング検品ではなく全量検収を行い、品質一貫性99.7%を維持しています。抜き取りだと、ばらつきの発見自体が運任せになるためです。
3. 人手の確保
ツールを入れても、作業する人は必要です。数千件を超えると、これが最大のボトルネックになります。
開発メンバーが作業に回ると、本来のモデル開発が止まります。アルバイトを採用しても、教育と品質管理の工数が新たに発生します。ツールの選定で解決する問題ではありません。
実例で見ると分かりやすいと思います。環境スタートアップの株式会社ピリカでは、内製での作業が月1,000件程度で頭打ちになっていました。ツールの問題ではなく、増え続ける動画データに人手が追いつかない状態です。
環境AIのデータ作成をコスト半分・大規模で環境スタートアップ・ピリカのポイ捨て調査「タカノメ」AI開発の導入事例。増え続ける動画データのアノテーションをアノサポが担当し、コストを約半分に、処理量を月10万件・累計100万件超へ拡大。内製では届かなかった規模のデータ基盤づくりを支えました。annotation-support.com
ピクシーダストテクノロジーズの場合は、社内でアルゴリズム開発と並行してデータ作成を行うと約4ヶ月かかる見込みでした。エンジニア約2ヶ月分の時間が、データ作成に消える計算です。
ツールを選ぶときの5つのチェック項目
形式が決まったうえで、次を確認してください。
- 使いたい形式に対応しているか。 矩形しか扱えないツールでセグメンテーションはできません。
- 学習に使える形式で書き出せるか。 YOLO形式、COCO形式など、使うフレームワークに合う出力が必要です。書き出しの詳細はYOLO 学習データの作り方で解説しています。
- 複数人で分担できるか。 3人以上なら、作業の割り当てと進捗管理の機能が要ります。
- 修正のフローがあるか。 検品して差し戻す、という往復ができるかどうか。
- データをどこに置くか。 機密データなら、外部サービスに置けるかを先に確認します。
内製と外注の分かれ目
ツールを探している段階の方に、外注を勧めているわけではありません。検証段階では内製のほうが速いのが実際です。どの形式が必要かを探っている最中は、手元で試したほうが判断が早くなります。
分かれ目は、次のいずれかに当てはまったときです。
- 作業に開発メンバーの時間が奪われ始めた
- 件数が数千を超え、継続的に追加される見込みになった
- 複数人で作業して、品質のばらつきが問題になってきた
この段階では、ツールを乗り換えても解決しません。問題がツールではなく体制に移っているためです。
先ほどのピリカでは、外注に切り替えたことで処理件数が月10万件まで拡大し、累計の納品データは100万件を超えました。コストも従来の約半分になっています。ピクシーダストテクノロジーズでは、6名の専任チームで2ヶ月で完了し、エンジニア約2ヶ月分の工数が開発に戻りました。
建設現場DXのAIを大量データ作成で加速ピクシーダストテクノロジーズの配筋検査支援DX「TOTTARROW」認識AIの導入事例。配筋を色分けする高品質アノテーションを6名体制で担い、依頼を2ヶ月で完了。社内エンジニア約2ヶ月分の工数を削減し、開発チームをアルゴリズム開発に集中させました。annotation-support.com
他の事例は導入事例のページにまとめています。
アノサポは単価を公開しており、矩形(Bbox)は6円〜/ラベル、セグメンテーションは25円〜/領域です。初期費用・月額固定費は0円で、作成したデータの実費のみです。詳しくは料金ページをご覧ください。
依頼先の選び方はアノテーション代行の選び方で整理しています。まずは実データ10〜50件程度を無料トライアルで試し、自作と比べてから判断いただけます。本発注も50〜100件程度のPoCから対応しており、最低発注数の縛りはありません。
よくある質問
Q. 無料のアノテーションツールで十分ですか?
1〜2人で数百件を単発で作るなら十分です。3人以上で分担する、数千件を超える、継続的にデータが追加される、といった条件が重なると、ツールの機能より運用の負担が問題になります。
Q. どのツールを使えばいいか教えてもらえますか?
使いたい形式と作業人数によって適したものが変わります。ご相談いただければ、要件をお伺いしたうえで一緒に整理します。ツールの選定だけのご相談も歓迎です。
Q. 自社で作ったデータの品質を確認してもらえますか?
はい。すでに作成済みのデータに対する検品・修正のご依頼も承っています。ラベル設計の見直しからご相談いただけます。
Q. 途中まで自作したデータを引き継げますか?
可能です。使用されていたツールと出力形式をお知らせください。形式が合わない場合は変換も含めて対応します。
Q. 外注するといくらかかりますか?
矩形(Bbox)は1ラベル6円〜、キーポイントは1点3.5円〜、セグメンテーションは1領域25円〜です。初期費用・月額固定費は0円で、費用はラベル数で決まります。正確な金額は無料でお見積りします。
まとめ
アノテーションツールを選ぶ前に、どの形式でラベルを付けるかを決めてください。順番を逆にすると、ツールに合わせて不要な精度で作り込むことになります。
無料ツールは実用的です。1〜2人・数百件・単発なら、それで足ります。
ただし、ツールが解決してくれないものが3つあります。ラベル設計・品質のばらつき・人手の確保です。ここが問題になってきたら、それはツールの問題ではなく体制の問題です。乗り換えても解決しません。
まずは無料で、あなたのデータで品質をお確かめください。

